梅の甘露煮との出会いは若狭で
甘露煮と聞けば、鮎など淡水魚のそれを私は最初に思い出します。
砂糖、醤油、味醂がそのベースになっている印象。
11月。初めて若狭を訪れた際に泊まった宿の食後のデザートに梅の甘露煮が登場。生まれてこれまで口にしたことがなく、パッと見ただけでそれだとわからず、お品書きに記載があり、どんな味わいなのか食後まで楽しみが一つ増えた気がしました。
若狭は梅とその加工品の産地
加工品とは主に梅干しや梅ジュース、梅酒が中心でお土産物コーナーには必ずと言っていいほど設置されています。
江戸末期から栽培が始まり、国から奨励され、生産量も昭和の間に大きく拡大。日本海側の最大の梅産地へと変貌していきました。
主力品種のうちの2つ、紅さしは梅干しに、剣先は梅酒などに加工されるのですが、品種というのは個性を明確に示していて、味わい深い品へと変貌しています。
特に、紅さしで作る梅干しは、そもそもタネが小さい品種で、完熟した実は皮が薄く、可食部分が多いとして梅干しに最適。アミノ酸が豊富なことから、シンプルに塩と紫蘇で漬けたものは、程よく旨味のある酸味が強くない梅干しになります。しかも希少種。南高梅を食べ慣れた方にはおすすめの一品です。
夏場の食欲が少し下がる頃合いに、きゅうりと鰹節とわずかな醤油と味醂で和えてあげれば一気に体の疲れを回復させてくれる気がします。
梅の甘露煮を自分で作ってみよう
本来は、この梅が取れる6月にたくさんの甘露煮を作りたかったのですが、如何せん、今年は例年になく梅が不作の年。冬場の気温が高いことで花の開花が早まり、結果的に実をつける量が極端に下がったそう。
そもそも供給量が少ない福井梅なのに、その不作影響もあって地元スーパーでも争奪戦にまでなっていました。とても残念ではありましたが、今年は紀州の南高梅で作ることに。
梅を水で洗い、ホシと言われる実と枝が繋がっていた部分を丁寧にほじくり、煮て皮が破れないように爪楊枝で実を刺していく。ミネラルを多く含む素炊糖で煮詰めていくと、徐々に梅からエキスが出て鍋の内側を琥珀色に染め始めました。
優しく丁寧にコトコトと煮ていくとできあがり!
副産物に梅シロップもたくさんできるので、二重の喜びで満たされます。
出来上がったものは冷まして一部をジップロックに入れて冷凍庫へ。
そして一部はシロップを炭酸水で割り、そして、肝心の甘露煮はガラスの器に入れます。ガラスの涼やかな風情と、甘露煮の爽やかな酸味とで、夏の暑さが一気に軽くなるような気がしました。
口に含んでみれば甘くも梅の香りと酸味が適度に広がり、美味しくて思わず何粒も手にしたくなります。
冷凍など保存に気をつければ甘露煮は秋ごろまで数ヶ月は楽しめるのではないでしょうか。
まとめ 梅仕事をしながら心に余裕を蓄えて
ちょっと手間はかかりますが、市場では一般的に販売されていない甘露煮。
多忙な日常と切り分ける時間を少し作って、ご自宅で梅仕事を楽しんでみられては。
忙しい時、頭が煮詰まっている時、心に余裕がない時ほど、こうした手仕事に手を出す発想は得られにくいかもしれません。とはいえ、仕事の効率を高めるには、ちょっとした遊びを加えていくことが大切と言われますしね。梅仕事は遊びとはいえないかもしれませんが、いい気分転換になりますよ。
Today is the first day of the rest of my life.