伝統文化は長年積み重ねられた地域の宝。その歴史を感じることは豊かな時間の感じ方にも繋がるでしょう。
本記事では、若狭伝統のにしんの寿司をご紹介します。
寒くなってから仕込まれるにしんの寿司
にしんの寿しは、若狭町から小浜にかけて流れる北川流域を中心に作られているそうで、江戸時代に日本海を航行した北前船が小浜に寄港した時に北方のにしんが届いたことから始まった発酵食。
身欠きニシンを、塩漬けしたダイコンや米麹と合わせてたるに入れ12日間発酵させて作る。発酵食は味噌もそうですが、やはりカビにくい寒い季節になって仕込みが始まりますね。
だからこそ、正月料理には欠かせないもの。若狭町は元々三方町と上中町が合併した町であり、町民全員が食べているわけではなく、主に北川が流れる上中町を中心に食べられていたのかもしれません。
実際、旧上中町出身の方に聞けば、「にしんを軽く焼いて食べるのがうまいんだ」という話もあれば、旧三方町出身の方は、「聞いたことはあるけど食べたことはないな」というご意見。
伝統が息づくのも地域性が表れるのかもしれませんね。
実際購入してみると
米麹で発酵させていて、なれずしの一種にあたるとのこと。麹漬ともいえる保存食です。
材料は、大根、身欠きにしん、米麹、鷹の爪、味醂、塩と至ってシンプル。
銀杏切りにした大根をメインにして作られているのですが、どうやら冬に仕込まれるだけではなく、なすやきゅうり、うりなど、季節の野菜を使って夏から冬まで「にしんすし」をつくってきたのもあるそうです。
発酵のタイミングを思えば冬なのかと思いきや、そうばかりでもないのですね。きっと、おいしくて、栄養価も高く得られることから先人の食の知恵だったのだろうと思います。
いざ実食
実際食べてみると、大根がにしんの旨みと麹の甘さをたっぷり吸収して豊かな味わいになっています。季節性はもちろんですが、大根を合わせている理由がちょっとわかった気がします。個人的には日本酒と合わせたいですね。できれば、芳醇辛口でスッキリととした後味のものが良さそう。
にしんの寿司は、産直市場のJA福井県若狭ふれあい市場小浜店で販売(250g¥486)されていました。3月ぐらいまでの期間限定品で、その他にも小浜市内のAコープや道の駅でも取り扱いがあるようです。
旅に出れば、地元のスーパーをのぞくのが私の趣味。
地元商店こそ、地元の方が長く愛している商品を継続的に扱っていらっしゃるケースが多く、商品にその土地らしい特徴があるように思います。その土地固有のユニークさ、ですね。それが旅の醍醐味。
まとめ
若狭の、特に北川流域で受け継がれる冬の伝統食、にしんの寿しをご紹介しました。
発酵食ではありますが、旨みが際立つ一手間かかった贅沢品。
全国に発酵食は多数ありますが、こうした歴史と紐づいた伝統食もまたその土地ならでは。
なぜ若狭でにしん?と思ったら、にしんの寿しを頬張りながらちょっと紐解いてみてください。
Today is the first day of the rest of my life.