推奨される貪欲さ
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営業マン時代、貪欲であることは営業統括部長から強く推奨されていました。
例えば、営業マンが一堂に会する場面で、冒頭の営業統括部長の挨拶の場面。
プレゼン時間は30分を設定されているところ、60分近く熱弁を振るって、営業や営業課長は貪欲であるべきだ、と営業を奮い立たせました。
戦後、1950年代前後の生まれは、モノ不足の時代から経済成長を伴って急激に富を増やし、経済も徐々に潤っていく中で、消費に対する意識の高まりがあったと言われました。時計や靴、車といった高級品に対して、それを手に入れ、所有欲や成功を示したいと「乾いた世代」とおっしゃっていたのを覚えています。
営業マンは20代から50代。全員がそうした「乾いた世代」ではありません。
しかし、乾いた世代のように、もっと働きなさい、というメッセージです。
もっと貪欲になれ、とメッセージを発して、1軒でも1名でも多くの得意先や担当者と会い、製品を一人でも多くの手元に届けなさい、と。
製品を求めておられる既存・新規顧客に、一人でも多く届けるのは営業の役割です。ただ、何でもかんでも貪欲さを出せば良いものでもないでしょう。
欲の落としどころ
私は、製薬会社でMRから社会人人生をスタートしました。
MR時代も、営業課長時代も、そしてマーケティング、支店長補佐の時代も変わらず、常にエンドユーザーである患者さんの人生や生活を想像していました。その上で、患者さんと直接的に関わる医療従事者の診療方針や個々の思いを大切にしようとしてきました。
私の仕事上の、なぜ頑張るかの落としどころは、物欲を満たす飽くなき乾いた精神ではなく、顧客の全てから「ありがとう」の一言をいただけることが全てでした。その対価として、売上が上がり、給与やインセンティブにつながる、と考えていたのです。
リーダーは押し売りせず
冒頭の営業統括部長は、悪気があったのではないと思いますが、自分の世代を引き合いに出し、もっと君たちは欲望をむき出しにして働きなさい、と聞こえるお言葉を発しておられました。
貪欲は営業の世界では正当化されます。
それを表現し、体現する者は素晴らしいと称えられます。
ですが、本質的には、営業はモノを押し売りするのではなく、相手の立場に立って、今困っていることや自分で気づいていない悩みや苦悩について吐き出してもらいながら、寄り添って問題を解決するお手伝いをする介在者だと思います。そのツールとして製品があり、製品の良し悪しをしっかり理解して、競合他社の情報もインプットした状態で、顧客に合わせてご提案する。
営業を統括して当時の営業550人を率いる上で、そうした本質をしっかり伝えた上で、貪欲の功罪も紹介した後に、営業マンを奮い立たせるメッセージであれば納得感が高まったのではないかと思います。
まとめ
十悪の一つ、貪欲。
欲望は人を駆り立て、モチベーションを高め、自分自身を動機づけさせるエネルギーに変換することができる、誰もが持っている人の心です。
ですが、使い方を誤ると、大切なヒトやモノ、お金を失うリスクを抱えることになります。使い方自体も、自制心とほどほどを知っておかないと飲み込まれることにもなりかねないと感じます。
人それぞれ正しく情報を発信し、誤認させるような言葉やストーリーはないか、大事な場面は特に注意深くメッセージを発信していきたいものですね。
Today is the first day of the rest of my life.
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